エゴノキプロジェクト 〜美濃の森が日本の和傘を支える〜


エゴノキプロジェクト2016の詳細は、こちらのホームページをご覧ください。


▼エゴノキプロジェクトとは?

 和傘は岐阜市が日本一の生産量を誇り、また全国各地にも和傘の産地があります。しかし和傘の部品を生産する所となるとその数は限られており、傘骨をつなぐ「傘ロクロ」という部品は岐阜県内のたった1軒の木工所で全国の分が作られています。この傘ロクロにはエゴノキという木が使われており、最近まで岐阜県内の森で収穫して木工所へ納入する人がいたのですが、その人が亡くなり供給が絶たれる事態になりました。全国唯一の木工所で材料が手に入らなくなれば、日本中の和傘づくりがストップしてしまいかねません。
 このことをきっかけに2012年度から、岐阜県立森林文化アカデミー・美濃市の林業グループ山の駅ふくべ・全国の和傘職人たちが、共同で和傘づくりに必要なエゴノキを毎年収穫する「エゴノキプロジェクト」を始めました。
傘ロクロ。細かい切り込みの1本1本に、糸をかがるための穴が斜めに開けられている。

 かつて和傘用のエゴノキは、里山で炭焼き用の木を伐った際に他の木と仕分けられ、和傘業者のもとへ届けられていました。炭にするよりも高く売れるので、山の人にもメリットがあったのです。しかし山で炭焼きが行われなくなると、エゴノキだけを探して伐らなければならず、労力に見合わない仕事になってしまいました。

 そこでエゴノキプロジェクトでは、新しい形で伝統工芸を支えることを目指しています。森林や木材について学ぶ専門学校である森林文化アカデミーは、教育の一環としてこのプロジェクトに関わります。教員や学生たちは伐採作業にも携わるほか、持続可能な形で収穫できるよう、伐採方法の研究や生育状況の調査を行っています。
 山の駅ふくべは、美濃市片知地区の住民が中心となって、地区の森林を守り育て、魅力的なエリアにすることを目的として活動している森林ボランティア団体です。エゴノキプロジェクトの趣旨に賛同し、初年度からプロジェクトに参加しています。
 岐阜をはじめ全国の和傘職人たちも、初年度から伐採に参加しています。伐採現場に和傘を持参して、学生や森林ボランティアの人たちに和傘の美しさやエゴノキの森の重要性を伝える役割を担っています。
 その他、岐阜県庁や森林組合の職員、一般の方、和傘愛好者や京都の老舗の和傘店の方など、たくさんの人たちに支えられてエゴノキプロジェクトは成り立っています。


2013年の伐採の様子。約50人が集まり、1日で500本を収穫する。

▼エゴノキについて

 エゴノキは、エゴノキ科の落葉小高木です。北海道から沖縄まで全国の雑木林に見られます。5月頃にかわいい白い花を咲かせ、小さく丸い実をつけるので、庭木としても親しまれています。
 昔から傘ロクロに使われてきたため、岐阜県では「ロクロギ」と呼ばれています。なぜこの木だけが使われてきたのかと言うと、エゴノキは材質が非常に緻密で粘り強く、傘ロクロのように細かい切り込みを入れても折れたり欠けたりすることが少ないためです。きっと昔の傘ロクロの職人たちがさまざまな木を試し、もっとも優れた特性を持つエゴノキにたどり着いたのでしょう。
 
 全国の雑木林に生えるならばどこでも簡単に手に入るかというと、そうではありません。傘ロクロに用いられるエゴノキは、真っ直ぐで節があまりないこと、細い傘用なら直径が4~6センチ程であることなど、さまざまな条件があります。それらの条件を満たすエゴノキは、なかなかないのです。
 エゴノキプロジェクトでは岐阜県内各地を探した結果、美濃市の瓢ヶ岳(ふくべがたけ)の山麓に、条件を満たすエゴノキが密集して生えている場所を見つけることができました。しかも、この森でかつて和傘用のエゴノキを収穫していたという地元の人の証言も得られました。そこで、この森で伐採し、若いエゴノキを育てることにしたのです。

 育てると言っても、種を蒔いたり苗木を植えるのではありません。伐採した切り株をそのままにしておくと、自然に若い芽がたくさん生え、競うように上へと伸びていきます(萌芽更新)。こうして育った新しいエゴノキは枝が少なく真っ直ぐで、傘ロクロにもっとも適した樹形になります。新芽をシカに食べられないように胸元の高さで伐採するなど、持続可能な収穫のために伐り方も工夫をしています。さらに森全体のエゴノキの本数を数え、直径何センチのエゴノキを何本ずつ伐採すると、将来何本になるかというシミュレーションも行っています。
 
切り株から萌芽したエゴノキ

食害を防ぐため高伐りしたエゴノキ

前年度に伐採した株からの萌芽

▼スケジュール

 毎年、11月の勤労感謝の日の頃に伐採日を設けています。1日で全国の和傘づくりに必要なエゴノキの量、500本を収穫します。
 これまで伐採の翌日に、和傘関係者どうしの交流会や傘ロクロの木工所の見学会を行うなど、エゴノキプロジェクトに関わる人たちの交流を深める活動も行ってきました。
 
 2016年のエゴノキプロジェクトは11月26日(土)に実施します。詳細はこちらのホームページをご参照ください。


傘ロクロの木工所の見学会


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このサイトは岐阜県立森林文化アカデミー准教授・久津輪 雅が開設しています。

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