9月から始まる1年生のグリーンウッドワークの椅子づくり。例年は飛騨市へ丸太を買いに出かけていたのですが、今年はもっと身近な森を利用しようと、森林文化アカデミーに隣接する演習林の木を使うことにしました。

林業再生講座の杉本先生、2年生の笠木君、アカデミー卒業生で演習林管理人の佐藤さんと共に森へ入りました。しばらく歩いて、手頃なクリを発見。クリは割りやすく削りやすいのでグリーンウッドワークに最適なのです。さっそく笠木君に伐採してもらいます。



適当な長さにした後は林内作業車で搬出。


実習用の木工材料をこんな形で調達している学校は、おそらく他にないのではないでしょうか。これができるのが森林文化アカデミーの強みです。
国内ではこれまで家具作りに使ってきた広葉樹の大径木がいよいよ底をつき、海外から輸入する木材も環境保護のための規制や近隣諸国との競争などから日本に入りにくくなっていると聞きます。これからは、もっと身近な森の資源を利用する工夫が求められます。森林文化アカデミーでも、この分野の実習をいっそう強化していこうと思います。
ものづくり講座の久津輪です。森林文化アカデミーでは、学生たちに広い視野を持ってもらうため、海外のさまざまな木工家や木工の学校とより積極的につながりを深めようと考えています。

実はこれまでも海外の「森林文化」を学ぶため、在校生や卒業生を連れてイギリスやアメリカへ視察に出かけてきました。視察先で講演や実演を行ったこともあります。

ブライアン・ボグズの工房訪問(2009、アメリカ)。
ブライアンはアメリカのFine Woodworking誌にもたびたび記事を執筆する著名な木工家。

ドリュー・ランズナーのウィンザーチェア講座に参加(2009、アメリカ)。
ドリューは多くの著書があるアメリカの著名なグリーンウッドワーカー。

マイク・アボットの椅子づくり講座に参加(2011、イギリス)
マイクはイギリスのグリーンウッドワークの第一人者。

竹細工の実演、講座の開催(2013、イギリス)
バスケットの祭典に、世界各地の作り手とともに卒業生の鬼頭伸一さんと私が招待された。

アメリカやイギリスのグリーンウッドワークの教室では、夏の忙しい時期に若いインターン生を受け入れるのですが、「日本からも歓迎だよ」と言われている工房もあります。アカデミーで木工を学んだ上で海外研修を希望する学生には、こうした海外の木工講座や海外インターン先もどんどん紹介していこうと思います。

日本の木工技術の高さは海外の木工家たちにとても良く知られており、木工道具の愛好者も非常に多いのですが、日本から海外への情報発信は非常に限られています。一方、木工の雑誌やビデオなどの情報発信はアメリカやイギリス発が中心で、日本にも多くの読者がいます。歴史や技術は欧米にひけを取らないのに、情報は一方通行に近いのです。

海外の木工から学ぶとともに、日本からも情報発信しようと、ここ数年、イギリスの雑誌に記事を書き続けてきました。去年取り組んだ「ゴッホの椅子づくり」は3回の連載記事となり、うち2回は表紙も飾りました。
1号は、日本で最初の木工芸の人間国宝、黒田辰秋が1967年にスペインのゴッホの椅子職人を訪ねた際に撮影したもの(撮影は息子の黒田乾吉)。
もう1号は、ずいぶん格が下がりますが(笑)私です。

Living Woods Magazine(イギリス、2013年11〜12月号)。

Living Woods Magazine(イギリス、2014年5〜6月号)。
合成写真ではありません!


この記事がきっかけで、イギリス、アメリカ、オーストラリアから感想や問合せが多数ありました。ゴッホの椅子づくりは、世界で静かなブームになりつつあります。

先日のブログにも書きましたが、次は日本発の「削り馬」のデザインについて書く予定です。


情報発信のおかげで、海外から森林文化アカデミーの視察に来る人もいます。
実は10月にも、オーストラリアとアメリカの木工学校の代表者が来る予定で、せっかくなので向こうの学校についてのスライドショーをお願いしました。先方には快諾していただいたので、一般の人にも見ていただけるよう生涯学習講座として開講しようと思い、いま準備中です。改めてご案内します。お楽しみに!
ものづくり講座教員の久津輪です。今回は「ローカルにこだわることでグローバルにつながれる」というお話。
まずはこのポストカードをご覧ください。デンマークのJohannes Larsen Museumの籠の展覧会の案内状です。下の段の竹籠の写真に日本人2人の名前。この鬼頭伸一さんと前西千寿香さんは、森林文化アカデミー卒業生で鵜籠づくりに取り組む2人です。
岐阜県美濃市で活動する2人がなぜデンマークの美術館につながったのかというと・・・。



去年の春、鬼頭伸一さんと私がイギリスのBasketry and Beyond 2013という籠の祭典に招待されて、ミニ鵜籠づくり講座を行いました。(そもそもなぜ美濃からイギリスへ招待?という話もあるのですが、それは過去のブログでどうぞ)
その写真がこちら。受講生はヨーロッパ各地から(!)参加してくれたのですが、この中にデンマークの籠作家さんがいたのです。後列の真ん中の女性です。このとき彼女から「来年、デンマークで小さな籠の展覧会があるからぜひ参加して」と言われて、それが実現したというわけです。

展覧会のテーマは「チェリーバスケット」。デンマークでは毎年7月に桜が咲き、お祭りを行うのだそうですが、それに合わせてサクランボを摘むイメージで「チェリーバスケット」というテーマの籠の展覧会を開いているのだとか。素材、形などは自由です。
そこで鬼頭さんと前西さんが制作したのがこの竹籠。鵜飼の籠の作り手であることを意識してくれたのか、展覧会場では鳥の絵の前に置かれています。

他にもいろんな籠が並びました。下の写真は、ナラの木を剥いで編む籠。この技術を持つイギリスでただ1人の作り手、オーウェン・ジョーンズさんの作品です。

さて展覧会は7月5日から8月3日まで開かれ、販売もされたのですが、日本から送った籠も6つのうち5つが売れました(それもかなり高い値で!)。
で、残った一つを返送する代わりにデンマークの籠を送ってほしいとお願いしたところ、届いたのがこちら。
展覧会を主催した作家、Helle Baslundさんがショウブの一種で作った籠です。こすると良い香りがしますよ、との添え書きも。とてもすてきな国際交流になりました。

森林文化アカデミーでは地域の素材や文化にこだわったローカルなものづくり活動を行っているのですが、それが卒業生のこんなグローバルな活動につながるととても嬉しいです。ローカルにこだわるからこそつながれる、と改めて思います。

森林文化アカデミーでは、今後さらに世界中のものづくりとつながる活動を行っていこうと思っています。またこのブログでお知らせします。お楽しみに!


 岐阜は日本一の和傘の産地です。その和傘の骨をつなぐ傘ロクロと呼ばれる部品に使われるエゴノキを、全国の和傘職人さん、地元の森林ボランティア、森林文化アカデミーの学生や教員たち、みんなで協力して伐るイベント「エゴノキプロジェクト」。2012年度から始めて今年が3回目です。

 今年は日程が11月23日(日)に決まりました。悪天候の場合は翌24日(月・振替休日)を予定しています。一般の方も参加できます。受け付けは10月頃から始める予定ですが、参加ご希望の方は、まずはスケジュールを空けておいてくださいね。

 なお伐採の翌日にはイベントを行う予定です。今年は、
「めざせDASH村〜足踏みろくろなど昔の手工具だけで傘ロクロを作ってみる」
「岐阜市歴史博物館所蔵の和傘制作工程のビデオを観る」
などの案が挙がっています。こちらもお楽しみに。

 エゴノキプロジェクトについてのお問合せは、森林文化アカデミーの久津輪 雅までお願いいたします。

2012年度の写真(クリックすると過去の記事を表示します)

2013年度の写真(クリックすると過去の記事を表示します)



 今日は農林水産省と東海農政局から森林文化アカデミーへ、世界農業遺産の認定申請に伴う現地調査に来られました。

 世界農業遺産とは、地域環境を生かした伝統的農法や、生物多様性、農村文化、農村景観が守れた土地利用などを「農業のシステム」として一体的に維持し、次世代に継承していくことを目指し、FAOが創設したものです。詳しくはこちら
 岐阜県では、「清流長良川の鮎(里川における人と鮎のつながり)」の認定をめざしています。

 なぜ森林文化アカデミーに現地調査かといいますと、長良川の鵜飼に欠かせない鵜籠づくりの人材育成や材料確保の支援をしているからです。
 また、長良川上流の木・竹・紙が下流で和傘や提灯に加工されていることも重要な文化的資産であるとして、和傘についても説明しました。森林文化アカデミーでは、和傘の人材育成や材料確保(エゴノキプロジェクト)もお手伝いしています。

 昨年、県の広報番組で岐阜県知事と森林文化アカデミー学長が対談した際に鵜籠や和傘の取り組みが紹介されて以来、知事も学長も「アカデミーと言えば鵜籠、和傘」と各地でPRしていただいているようで、現場としてはとても有難いです。晴れて世界農業遺産に認定されると、もっといいですね!
ものづくり講座教員の久津輪です。
この夏、新型の削り馬を開発しました!


削り馬=shaving horseとは木材を加工するための道具で、文字通り馬のようにまたがって足でペダルを踏み、木材を固定するものです。両手が空くのでしっかり刃物を持つことができます。

ヨーロッパやアメリカでは古くから使われてきたものですが、日本では昔から地面に座って材料を足で押さえたり、腹に当てて押さえたりしてきたので、この道具は発展してきませんでした。そこで森林文化アカデミーではオリジナルの削り馬をデザインし、普及させてきました。少しずつ改良を加え、第3世代まであります。下の写真は授業中の様子ですが、手前から奥へ、古い型から新しい型へ順番に並んでいます。細かい違い、分かりますか?

折りたためる削り馬は、欧米にはないアカデミーのオリジナルです。第3世代までも非常に優れたデザインだったのですが、いくつか課題もありました。
下の写真のように削る台が斜めになるので、足を緩めると材料がすべり落ちてしまうこと。そして子供が削ると刃物が顔の近くに向かってしまうことです。

そこで、冒頭の写真のように削り台の角度を自由に変えられるようにしました。また大きなペダルをつけることで、踏む力を伝えやすくしました。それでいて、わずか10秒ほどで折りたためるのは今まで通りです。

さて、「岐阜から世界標準へ!」というのは大げさに聞こえますが、実はそうでもないのです。私はイギリスのLiving Woods Magazineという雑誌に記事を書いているのですが、以前この折りたたみ式の削り馬の写真を載せたところ大きな反響がありました。なんと既にイギリスでは、私のデザインをアレンジして削り馬づくり講座を開いている人までいます(興味ある人はMasashi Kutsuwa shaving horseで検索してみてください)。

今回の第4世代削り馬は、次号のLiving Woods Magazineに詳しく掲載する予定です。この分野ではイギリスやアメリカが先進国なのですが、岐阜から世界を変えていこうと思っています。

この木工、グリーンウッドワークは大きな可能性を秘めています。森林文化アカデミーの学生に、これを事業化して大きく発展させてほしいと思っています。関心ある人の入学を待っています!

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